時代を視る
2018年8月ニュースレター時代を視る NO.222
2018年8月11日
win win代表 赤松 良子
半世紀前、私がアメリカで研修生として主要都市を歴訪していた頃、「医者と弁護士は男の世界だ」という言葉を耳にした。「why?」と訪ねたところ、「収入がとてもいいから」だった。アメリカでさえそういう時代があった。今では、そんなセリフはよほどの田舎に行っても聞けないのではないか。アメリカ女性が、収入のよい職業へ果敢に挑戦し続けたからである。大学もそう。難関のハーバード大学も今や女性が大勢肩で風を切っている。東大だって? 確かに昔とは違って見える。私が通っていた頃(70年前)は法学部800人中、4人だったのだから・・・。それでも一年上には1人しかいなかったので、4人もいると驚かれたのは嘘ではない。今、法学部の女子学生は二桁? 三桁になった? 医学部も女子の割合は低いと聞く。これに対して「女子よもっと勉強せよ」とこそ思え、3割を超えないように男にゲタをはかせようなどと考える当事者はいないのではないか(私の希望的観測でないことを望む)。
文科省の調査(2018年度)によれば、全大学の学部に占める女性の割合が今年5月現在で45.1%になり、過去最高を更新したという。しかし、専攻分野別には偏りがあり、人文科学は65.3%と過半数を超える一方、医・歯学は35.2%、工学は15%にすぎない。女性は人口の半分を占めている。職業について、教育において、差別と偏見がなければ、どの学部にも女子学生が半数ぐらいいて自然であろう。医学部は特別だから独身主義者をとるという規定を作ってみてはどうか? やはり世の中から批判を受けて立ち往生するのではないか? 男子が7割以上になるように得点を操作するというのも同様に批判を受けるのは当然である。
人口の半分を占める女性は出産に際して医師のお世話になることが多いが(昔はそうではなかったが)、できれば女医さんに看て欲しいと思うのは不思議ではないし、それ以外の病気でも、女医さんにかかりたい人は少なく
ない。
それなのに、入試で得点の操作までして、女子医学生を3割以下にしようとする東京医科大のお偉方の頭の中を顕微鏡で見てみたいものである。
理解し易い面もある。女性は出産、育児で休職、離職をしがちなので医師不足をもたらす、という点である。しかし、これは保育施設や人手を整えることで(産休6週間を除いて)回避できることなのである。医大ともなれば、そういう面への資金提供をする財力があるはずと察しられるのに、それはしないで、女子学生を減らそうというのは許されない「よいとこどり」ではないか。すべての職業が男女に開放され、それを個人が自由に選択することができ、自分の努力によって成功させていける社会こそ、私達が望むものである。それに逆行するような大学に、国が多額の国費を投じることなど、国民の納得が得られるものではないであろう。