時代を視る
2018年3月ニュースレター時代を視る NO.217
2018年3月10日
WIN WIN代表 赤松良子
お隣りの中国で、日本の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が開かれた。国会と同様、予算案の審議をするが、今年は14年ぶりで憲法改正の議題もあるという。即ち、現行法では国家主席の任期は5年で二期までとしているのを任期の制限を撤廃するという。結果、現主席の習氏が生涯主席でいる可能性が出てくることになりかねない。これは政権の集団指導体制を変革して、中国発足当時の毛沢東の大躍進時代の体制に戻ろうとするのかと推測されている。毛沢東は偉大なリーダーだったが、晩年、文化大革命の名の混乱が起き、大変な犠牲者を出したことは、半世紀を経てなお、人々の記憶から去っていない。独りの人間に権力が集中することは往々にして大きな危険が伴うのは洋の東西を問わず、歴史が教えてくれている。権力は腐敗する。その権力が絶対的であれば、絶対的に腐敗するのだ。だから、権力が一カ所あるいは一人の人間に集中しないように、賢明な人達が種々のシステムを創り出した。曰く三権分立、任期制、軍任の禁止、政党政治etc,etcである。19世紀以降長く存在したある政権は、その幾つかを有していると思われる。例えばアメリカ合衆国の大統領制。大統領の権力は大きいが、立法は上下両院で、司法は最高裁を頂点とする裁判所でと判然と分かれて居り、そして任期は二期8年を超えることはない(例外を作ったことはあったが)。イギリスは、三権分立で行政の長の首相は任期の定めは無いが、4年毎の総選挙で所属の党が敗れれば退くことになる。政党内での選挙も激しく、サッチャーのような長期政権は稀な存在だと言われた。ドイツのメルケル。サッチャーに匹敵する長期政権だが、最近の総選挙で過半数はとれず、連立の相手選びに悪戦苦闘の最中である。皆それぞれに苦労しながら民主主義の原則を守って国内政治を行っているのが現状である。
ところで中国。毛主席のあとを受けた鄧小平氏が、毛晩年時代の政治を反省し、権力の集中を防ぎ、複数の幹部の話し合いで重要政策を決める「集団指導体制」をうちたてた。その中で、政権幹部の定年制や任期制をも導入したのであった。毛主席没後20年で鄧小平が逝く。そのあと胡錦濤時代を経て(北京でオリンピックあり)、2012年に習近平政権が発足し、現在その二期目が始まっている。そしてあと4年というこの時期、憲法を改正して任期を延長しようと言うわけである。
すでにあの世にいる毛さん、鄧さんはこれを知ったらどう思うであろう? 鄧さんは勿論、「わしが折角知恵を絞って、よい体制にしておいたのに」と嘆くだろうが、毛さんは「権力を集中するのは仕方がないが、あまり長く持たせるのはまずいぞ」と言うのではあるまいか・・・。