時代を視る

2016年4月 ニュースレター 時代を視る Vol.193

2016年4月10日

WIN WIN代表 赤松良子

4月はじめ、「日本婦人問題懇話会 第2回同窓会」があり出席した。と言っても若い方達にはピンと来ないことであろうが、わが国の戦後女性史を学んだ人なら1962年に出発し21世紀はじめ(2001年3月)まで、40年近くにわたって、勇名を馳せた、この会の名は記憶しておられるのではないだろうか。或いは、山川菊栄、田中寿美子という名なら「あっ、知っている」という方が居られるかもしれない。久保田真苗、樋口恵子ならどうです?(最後の1人は存命でTVにもよく出る方だから、顔も思い出せるでしょう)そして、こっそり赤松良子。この会は、会報もきちんと出し、それに寄稿した方々は、最初は無名だったが、ちゃんとした論文の書き手だということが分かり、立派な雑誌や刊行誌から注文が入って有名になり、よい就職先までできるという時代があった。時移り、長きにわたって会の屋台骨を支えて下さった菅谷直子、駒野陽子氏らも今はなく、若く初々しかった友人も今や熟年を過ぎられたのを見て懐旧の感ひとしほであった。

 話し変わって、4月1日に安保法が発効した。日本は独立国として、個別的自衛権とともに集団的自衛権は持っている。しかし、憲法9条の制約により、その行使はできない、というのが法制局の見解、すなわち長い間政府の有権解釈であった。それを現政権はドーンと覆してみせた。「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止すること」というのが集団的自衛権の定義である。例えば、アメリカが世界のどこかで、他国から武力攻撃を受けたとする(日本が攻撃を受けるよりはるかに可能性が大きい)。そしてアメリカ政府から日本の自衛隊を派遣してこれを排除するのに協力をして欲しいと要請があったとする。

これまでは、日本はそういうことは憲法の制約があってできません、と答えることになっていたのを、今やOK、やりましょう、ということになるのである。非常に大きな変更だが、これを安倍内閣はまず閣議決定という形でやり、続いて法律を通して追認した。これを法制局がNOというと困るので、まず、法制局長官の人事をやり、それまでの慣例を破って、長官を内部からの登用でなく、集団的自衛権に賛成を表明している外務省元幹部を法制局長官に任命した。この人が急死したら、同様のことをくり返して、法制局がNOと言わないように準備をしておいて、集団的自衛権を日本が行使できるよう法案整備をしたわけである。いわゆる安保法案と呼ばれ、与党が圧倒的多数の国会を通り、6ヶ月が経過したので発効をするという経緯であった。日本は戦争のできない国から、できる国になったといえるのであろう。

しかし、まだ、憲法との関係はクリアにされていない。現に憲法違反を理由として法律を無効とするよう訴訟が提起されており、最高裁の判断がまたれる。安保法反対の声は国民の中からずっと続いており、昨夏以来官邸を囲むデモは絶えることがない。一方憲法違反だと言うのなら、憲法そのものを変えようと、改憲勢力は声を強める。そして迎えるのが、直近の参議院選挙である。問われるのがアベノミクス(経済問題)ばかりでないのは当然であろう。