時代を視る

2025年4月ニュースレター 時代を視る

2025年4月15日

一般財団法人WIN WIN 代表 山口 積惠

新年度がスタートしました。ですが、3月中旬以降に、日本のみならず、隣国韓国をおそった自然災害の大きさに驚くばかりです。2月の岩手県大船渡市の山林火災に続き、3月末には愛媛県今治市と岡山市南区で次々と発生し、さらには宮崎でも発生しました。韓国の山林火災では、広範な被災面積と死者の数に驚きました。専門家によれば、温暖化がすすむと極端な火災が起こりやすいというのです。温暖化が乾燥を引き起こし火災を発生しやすくし、火災が起こればCO₂が発生して温暖化に拍車をかけ、それが乾燥をさらにすすめ・・・という悪循環になっているという指摘でした。また、ミャンマーの大地震もあり、地球の変動が気になります。

自然災害に心を痛めている間に、アメリカが世界の貿易国相手に大規模な関税を発動したニュースがあり、残念ながらこれがアメリカのリアルであると、改めて思うのです。

 

今月のニュースレターでは、理不尽でとうてい納得できない2つの話しです。

一点目は兵庫県知事によるパワーハラスメントに関する内部告発についての一連の知事の対応と、3月19日に公表された第三者委員会の報告を受けてのコメントに対してです。第三者委員会では、告発者を探し出し、懲戒処分としたことは公益通報保護法に違反すると指摘しています。ところが知事は会見で「告発者を探し出して懲戒処分にしたのは適切」であり、公益通報者保護法違反の認定に対しては「考え方が違う」と言い切っています。加えて、先の百条委員会の報告書に対しても、「一つの見解」と軽んじています。だが、一連の問題が発覚以降、元県民局長と、百条委員会の委員を務めた元議員の2名が死亡しており、いずれも自殺とみられていることをどうとらえているのでしょうか。そもそも、内部告発者が法律で保護されないなどということは、あってはならない事です。あろうことか県のトップが、自ら告発者探しを命じた責任は大きいと思い、失われた2人の命を思うと、その無念さが迫ってきます。

もう一点は、「停戦」を無視するイスラエルのパレスチア自治区のガザに対する空爆です。1月19日に、15カ月に及んだ戦闘を「停戦」することで双方が合意したはずですが、イスラエルが3月18日に空爆を再開し、400人以上の死者を出したという報道です。その後もガザ地区への空爆や地上攻撃が続いていて、死者の数も増え続けています。停戦合意の第一段階から、双方の意見に隔たりが感じられましたが、それが現実になり、

和平がますます遠くなっています。これまで約5万人の命が奪われ、そのうちの1万8000人が子どもだといいます(4/7毎日新聞)。戦闘がやまない限り状況は変わりません。国際社会は打つ手がないのででしょうか。納得できません。

 

第十期赤松政経塾・第7回が3月17日(土)、国際文化会館で開催されました。講師は衆議院議員・阿部とも子さん(立憲民主党)、社会学者の山田昌弘さん(中央大学文学部教授)でした。

第一講義の阿部とも子さんの講演を紹介します。テーマは人道外交です。

阿部さんは冒頭、クウェートの通信事業所が製作した動画の上映を行いました。動画は、主人公の少年がもう歳を重ねることのない子どもたちとともに、ニューヨークの安保理に行って無差別攻撃の悲惨さを訴えるというものです。歳を重ねることのない子どもたちこそ、ガザでイスラエルの攻撃によって死んだ子どもたちです。子どもたちは言います。「僕らに爆弾の嵐が降り注いでいます。僕らは死んでしまったけれど、この命と引き換えにいつかは幸せになる。そしていつか戻るんだ」と。動画は国際社会への静かで強烈な抗議でした。

2024年2月に、阿部さんを事務局長とした、ガザの即時停戦の実現を求めて超党派人間の安全保障外交の推進を考える議員有志の勉強会が発足しました。発起人代表は、首相に就任する前の石破茂氏で、8回ほどの勉強会を重ね、同年5月に超党派の「人道外交議員連盟」(議連・会長は武見敬三参議院議員)を設立しました。

小児科の医師でもある阿部さんは、ガザの死者の7割が女性と子どもだと説明し「イスラエルの攻撃は子どもと女性を狙っている。子どもを殺す戦争はあってはならない」ときっぱり。議連では、「国連パレスチナ難民救済事業機関」(UNRWA・ウンルワ又はアンルワ)の関係者を招いての講演なども実施していて、パレスチナ難民に対し教育及び福祉などの支援を継続的に行っていくべきだとして、2025年2月には、人道支援の更なる強化を外務省に要請したと言います。要請ではメディカル・エバキュエーション(医療避難)の実施やガザで生活・教育などの支援に欠かせない役割りを担うUNRWAへの支援継続などを訴えています。

阿部さんは「人道外交こそ世界の溝を埋めるものです。どのようにガザの子どもたちを守るのかが問われています」と語ってくれました。(理事・甘利てる代)