時代を視る

2016年8月 ニュースレター 時代を視る Vol.197

2016年8月10日

WIN WIN代表 赤松良子

7月末の都知事選で小池百合子氏が当選した。他の候補者を大きく引き離して、ぶっちぎりの勝利であった。彼女の所属する党は別の人を立てているのに反旗を翻し、かといって野党連合には勿論反対。それなのにこの大量得票の原因は何だったのか?

東京という所は浮動票が大量にある。ムラや家族のしばりを受けず、個人で自由に候補者を選べる状況にある人がとても多い。また決まった支持政党を持たないというのが全体の4割にもなると報道されている。そして、この半分以上が小池氏に入れたというのである。さらに自民党支持層の半数近くが、小池氏に流れたのだ。これは自民党自体の候補者よりもずっと上回っていたのだから、強いわけであろう。(以上出口調査)自民党支持者が、党の方針にそむいて、小池氏に投票した理由は何だったのか? 党(都の)が小池いじめをするのに同情した、いわゆる「判官びいき」だという説がある。経歴から言っても、党推薦の候補者がそんなに見劣りするわけでもないのだから、そんなことしかないのか。いやある! 小池さんが女性だということである。これまで都知事は全部男性だった。そして直近の2人は「カネ」に絡んだ不評判で任期を全うできなかった。ここは一度女性にしてみたらと思う有権者は少なくなかったかもしれない。小池氏支持票は性別に偏りなく多いのだというから、男性の目から見ても、男は「カネ」に汚れやすいと映っているのか。それに世界の潮流というものがある。ヨーロッパの二大国、ドイツとイギリスの首相は女性である。最近イタリアで、首都ローマの市長に女性が当選した。日本の近くだって韓国の大統領、台湾の総督は女性ではないか。11月にはアメリカの大統領に女性がなるかも知れない御時勢である。

わが国も首都の知事が女性となったら、国際的にみた女性の地位の遅れを取り戻せるではないか。そういうことを有権者が感じたのだとしたら、いく分気持ちが慰められる。最後に「女性が活躍する時代」というかけ声との関係である。具体的な政策もなくて「かけ声だおれ」ではないかと悪口を言ってきたが、これが意外にきいていたのではないかと思い直してみる。この掛け声をかけている政権は小池氏を支持したわけではないから、直接役に立ったのではないにしても世の中の風潮として、女性が活躍することをよしとする気分が、「女性知事」に向かったのだとしたら、これはもう「歴史の皮肉」と言いたくなる。とりあえず、新都知事の誕生によって、右バネがききすぎることを危惧しつつ、あえて、歴史的快挙であることを認めるにやぶさかではない。