時代を視る
2014年10月 ニュースレター 時代を視る Vol.175
2014年10月22日
WIN WIN代表 赤松良子
新聞を読んでいると、不愉快なこと、腹の立つ記事に出会うことが多いが、時には嬉しい、良かったと思えるものもたまにはある。マララちゃんのノーベル平和賞受賞の記事がそれだった。パキスタンの17歳の少女が栄ある大賞を受けるというのだからすばらしいではないか。丁度一昨年の10月、マララちゃんが通学途中タリーバーンの過激派に銃撃され、瀕死の重傷を負った。一時は命も失ったかと思われたが、直ぐに英国で手術を受け、奇跡的に一命をとりとめたのだった。その後、世界中の人々(子供も大人も)から同情と励ましの言葉が寄せられ、彼女は見事に立ち直り、また再びカバンを持って学校に通い始めた。(本名はマララ・ユスフザイ)
17歳でのノーベル賞受賞は最年少。これまででは1915年の物理学賞を25歳で受賞(父と共同受賞)した英国の研究者、平和賞となると1911年の32歳のイエメンの人権活動家の記録を大きく塗り替えたことになる。また、パキスタン人としては、47年にインドから独立した後はじめてのことだと伝えられている。そのマララさんが大変勇気のある女性であるのは勿論だが、同時にとても聡明な人であることも嬉しい。昨年、国連総会へ招かれ、立派なスピーチをし、またオバマ大統領にも会って彼に感銘を与えた知性の持ち主だということである。彼女の家族の写真を新聞で見ることができたが、父母と弟2人で堅実な家庭の様子が見られ、(イスラム式一夫多妻でないので安心)父は学校を建てて、女子をも対象として教育の向上に献身している人だという。そして彼女は将来何になりたいかを聞かれ、「政治家」と答えている。以前は「医者」だったのが変わったのだそうだ。医者は人間の命を救える立派な職業だが、政治家―良い政治家は国を救うことができる。子供がとりわけ女の子が、安心 して学校へ行って勉強ができるような国にするのは政治家の仕事だと考えるようになったに違いない。本当に聡明な女性である。今年のノーベル平和賞のもう一人の受賞者は60歳の男性=カイラシュ・サティヤルティさんである。インドの児童労働問題の専門家であるという。ノルウェーのノーベル賞委員会は2人の受賞理由を「子供や若者への抑圧と闘い、すべての子供の教育を受ける権利のために奮闘している」点をあげている。インドとパキスタンは隣国で年中いがみ合っているのは嘆かわしいと思われていることに思いを馳せ、両方の国から受賞者を選んだのだそうだ。「お見事!」と言ってあげたいのは私ばかりではないであろう。 日本の「憲法9条」を平和賞にと推している運動が、今年は実らなかったのは残念ではあるが、わが国がこういう憲法を持っていることを、広く世界に向かって知らせていることに大きな意味があると考えられる。ノーベル平和賞は来年もある。あきらめることなく、粘り強く運動を続けてもらいたい。「夢はいつか叶う。特に立派な夢は!」と信じたい。