時代を視る

2014年9月 ニュースレター 時代を視る Vol.174

2014年9月10日

WIN WIN代表 赤松良子

第二次安倍内閣が改造を行った。2012年暮の成立以来1年8ヶ月が経過している。この間閣僚のスキャンダル、不適切な発言などで閣僚の交替がなかったのは、昨今の政権では珍しいことであった。その間に、集団的自衛権をめぐっての政策の大変換があったのに、内閣をゆるがすような国民の反発が起こらなかったのは、市民の側の不甲斐なさといえるであろう。衆院での圧倒的多数を背景にしているからだとはいえ、毎週首相官邸を取りまく反対デモも、1960年の安保改訂反対デモのような迫力が見られないのか。というわけで、留任の多い平穏な内閣改造であった。目立ったのは女性が5人閣僚に起用されたことで、「女性活躍」という新しいポストまででき、有村治子氏が就任した。女性が輝く社会を成長戦略の柱とするという安倍政権のウリなのと、女性の内閣支持率の低下を気にして改造前の2人から一気に倍以上に増やしたものと理解できる。ただしかし、数が多ければそれで良いとは言えないのもけだし当然のことである。影の薄い伴食大臣のポストばかりというのでは話しにならないし、何より閣僚たるにふさわしい人物かどうかが問われる筈である。

そこで、具体的に考察すると、まず経済産業担当の小渕優子氏である。名前からすぐに分かるように、小渕恵三元首相を父に持つ。恵三氏は首相歴任時代、自分自身を「冷めたピザ」とユーモラスにとぼけてみせたのが印象的だった。たしかに切れ者ではなかったがおだやかな人柄で評判は悪くなかった。彼女自身40歳の若さだが二度目の入閣で、最初よりはるかに重いポストである。原子力発電の再稼働という国論を二分する大問題を抱えるオフィスでどう振る舞えばよいのか、父譲りの慎重さで、大過なく乗り切ってもらいたい。父―子という二代にわたる首相はあっても父-娘というのはまだない。成功すれば、まさに「輝く女性の時代」のチャンピオンといえるであろう。次に法務大臣の松島みどり氏はどうか。新聞記者の出身だということなので、友人の記者や経験者に、どんな記者だったかを聞いてみたが、あまり情報が得られなかった。健筆をふるったというタイプではなかったのか? だが、その当時からずっとmaiden nameで通し、旧姓使用の不便さを味わった事だろうから、法務省で長い間棚ざらしになっている選択性夫婦別姓問題を解決すべく民法改正をされれば大したものだが、コンサバの多い政権で可能性はありや?

「女性活躍」という新しいオフィスを率いることになる有村治子氏は、行政改革、消費問題も兼務というが、新しいオフィスを立ち上げるのは大変な筈で、初入閣の若い人には荷が重いのではないか。二児を抱えての家庭との両立も楽ではない筈だから、「女性活躍」が掛け声倒れになるのではないか、気になるところである。

高市早苗氏と山谷えり子氏は、自他共に認めるコンサバで、首相のお友達人事だと批判されているようだが、気も強く、政治家としての経験は5人の中では豊富のようで、敵も多いかも知れないから、国会では難しい局面が訪れるかも知れない。

何しろ小泉内閣の出発の時とタイ記録の5人の女性閣僚。落ちこぼれのないように頑張ってもらいたい。