
時代を視る
2025年3月ニュースレター 時代を視る
2025年3月15日
一般財団法人WIN WIN 代表 山口 積惠
2月には、来襲した寒波の被害とともに岩手県大船渡の山林火災の被害の大きさに、自然の前で人間のできる事はそんなに多くはないと痛感しました。
直近で驚いたニュースを2つ。
一つ目は「米ウクライナ会談の決裂」。2月末のこのニュースに平和が遠のいたと感じた人は多かったでしょう。2月28日にアメリカで行われた米トランプ大統領とウクライナ・ゼレンスキー大統領の会談が、途中から激しい言い争いになったというのです。ニュースでは互いが応酬する映像の一部が放映されましたが、トランプ氏がゼレンスキー氏の言葉を遮るように次々とまくし立てる様子があり(その逆の場面もありましたが)、その姿に失望しました。それまでもトランプ氏はゼレンスキー氏を独裁者と決めつけたり、当事者であるウクライナの頭越しにロシアと協議をするなど、ウクライナに対して冷淡な印象を持っていましたが、恐れていた事態になりました。あるいはこの決裂もトランプ氏のシナリオ通りだったのか・・・などと勘ぐってしまいました(その数日後にはアメリカはウクライナへの支援を一時停止すると発表しましたから)。
いずれにしても予定されていた鉱物資源(トランプ氏の狙いはまさしくこれだった)の共同開発とそれに伴うウクライナの安全保障を巡る合意文書の署名は見送られ、現状、戦争終結の見通しは立たなくなりました。この状況をウクライナ国民はどのように受け止めたのでしょうか。そして、会談を明らかに失敗にしてしまったゼレンスキー氏の責任は大きく、今後の自身の去就にも影響してくるのではないかと思いました。
もう一つは、みなさんもニュース等でご覧になったと思いますが、SNS上で公開された、パレスチナ自治区ガザ地区をトランプ流リゾート地に変えるという未来図動画のことです。巨大なトランプ像をつくり「トランプガザ」と言ってのける無神経さに、ショックを受けました。これまでの死者は4万人を超え、がれきの街と化したガザ。そのガザに住む住民を、違う土地に追いやってリゾート化するという発想に、トランプ氏が大統領でいる今後4年間、国際秩序は守られるのだろうかと、心配になってきました。取り越し苦労であってほしいと願っています。
政府が国連への拠出金を、女性差別撤廃委員会の活動には使わせないという強硬な措置を取りました。理由の一つは、皇位継承を男系男子に限るという皇室典範に対して、女性差別撤廃委員会が改正を勧告したからだといいます。
この措置に対して、2月19日に都内で「CEDAWへの拠出金除外問題を外務省に聞く 外務省決定の速やかな撤回を」とした集会が開催され、約170名の参加がありました(SEDAW=女性差別撤廃委員会)。集会は女性差別撤廃条約実現アクション(①)と、日本女性差別撤廃条約NGOネットワークが主催したもので、数多くの女性団体と国会議員に加え、外務省からも職員1名が参加しています。
参加者からは、外務省の対応を問題視する意見や今後もCEDAMに向き合うというが具体的に説明してほしいといった意見が出されましたが、外務省は「この場でお答えすることは差しひかえたい」というそっけない回答でした。集会では6団体からなるSRHR市民社会レポートチームが取り組んで集めた、約26000筆の署名を外務省に提出しました。
加えて外務省宛てに出した要望書について、亀永能布子さん(①の事務局長)は、「外務省への質問項目は細かかったにもかかわらず、回答がほとんどなく、誠実さが感じられませんでした。私たちは外務省決定を撤回していただきたいと強く願っています」と話してくれました。赤松良子さんが存命だったら、外務省のこの一連の対応をどう思ったでしょうか。きっと烈火のごとく怒ったと思うのは私だけではないはずです。(理事・甘利てる代)