
時代を視る
2025年1月ニュースレター 時代を視る
2025年1月15日
一般財団法人WIN WIN 代表 山口 積惠
2025年が始まりました。今年もよろしくお願いいたします。新しい年を迎えて、昨年赤松良子さんを失ったWINWINではありますが新たな一歩を踏み出そうとしています。今年は7月に参院選があり、石破首相は衆参同日選挙の可能性も強く否定していないだけに緊張もひとしおですが、女性議員を増やすという使命を第一義に、会員のみなさまとともに進みたいと思っています。
世界では年末以降、いろいろなことが起こっています。韓国の大統領の進退は隣国であるがゆえに気になり、長引くウクライナとロシアの戦争、イスラエルとガザの戦争なども先が見えない状態が続いています。加えて、今月アメリカでトランプ氏が大統領に就任する影響は・・・などと枚挙にいとまがないです。世界は確実に動いているのだと思い、それが少しでも良い方向であるようにと願うだけです。
2025年の政治はどのような年になるのか、昨年行われた3つの選挙(東京都知事選、衆院選、兵庫県知事選)から見えたのは、インターネットが政治に多大な影響を与えることです。ことばを変えて言えば、ネットにあおられることが生じるという事です。ネット上で情報があふれるように提供され、読んだ市民はそれぞれ候補者に勝手なイメージを作り上げます。選挙に関心を持つことは望ましいことですが、ネット上に真偽不明の情報が飛び交うことで、見えなくなるものもあるように思いました。
ですが、一方でインターネットやAI(人工知能)を否定する時代は終わっているように思います。今回紹介する、第十期赤松政経塾(第三回・11月23日実施)では品川区長の森澤恭子さん(立候補時にWINWIN推薦)の「ウェルビーイングな社会の実現に向けて」とした講演があり、特に今後のAIとの付き合い方を示唆している内容であったと思いました。森澤恭子区長は都議を5年務めた後に、地域課題を解決する必要性を感じて首長に立候補したといいます。
森澤さんは「ウェルビーイングとは心身共に満たされた状態のことを言います。区では令和6年度にウェルビーイング予算を掲げ、区民が幸福を感じ、未来に希望が持てる社会をつくるのが政治と行政の仕事であると様々な施策を行ってきました」と言い、「区民のニーズを政策立案に生かしていくためにはエビデンスが重要であり、区では予算編成に生成AIを活用しました」と説明しました。
全区民を対象にしたアンケートの自由意見欄の回答約10万人分、650万文字をAIが分析し、課題を抽出し、優先度の高いニーズを4つの領域に整理したというのです。このアンケートで独自性が高かったのは、区立小・中学校に通う児童・生徒も対象にしたことです。学校のタブレットで回答を得ており、回答率は55.2%でした。こうした自由欄に記された多様なエピソード(ニーズ)を踏まえて具体的な政策になった一つが、夏休みに小中学生1人に対して2kgの米を所得制限なしで支給するというものでした。これは、夏休み中は給食がないので、栄養が不足する子どもがいるというエピソードなどを根拠としたものです。しかも、送るのではなく区内25カ所にある児童センターで受け取るようにしたため、対応した職員の気づきがあり、子どもが持つ課題の早期発見にもつながるといいます。
品川区のAIを使った予算編成は、全国初だといいます。人間が行えば膨大な時間が必要となるが、AIではわずか1.5時間だったことや、客観性が高いという点で説得力があります。品川区の取り組みを知るほどに、おそらくではありますが、今後私たちがAIやインターネットと付き合う時には、冷静さが求められていると思うのです。みなさんはどう考えますか。ご意見をお寄せ下さい。